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研究開発



重力波検出実験

★初級解説(キッズサイエンティストコーナー)
★詳しい研究内容(KEK重力波グループホームページ)


 鏡および振り子の熱雑音は、鏡や振り子の熱振動により実質的な干渉計の光路長が変わってしまうことに起因するノイズです。熱雑音を低減させるもっとも効率的な方法は、鏡や振り子を20K程度まで冷却してしまうことで、我々のグループでは世界に先駆けて、極低温レーザー干渉計の開発に乗り出しました。上の写真は、世界で最初に作られた6m規模の極低温レーザー干渉計型重力波検出器プロトタイプ(CLIK, 東大宇宙線研)です。ここで、最も重要な技術の1つは、いかに振動を伝えずに冷却するか?ということです。プロトタイプのCLIKではこの点で大きな問題がありました。そこで、KEK重力波グループではCLIO-100用に超低振動冷凍機システムを開発しました。

 この超低振動冷凍機システムは、市販のパルス管型冷凍機と特殊な防振システムを組み合わせたもので、冷凍能力0.5W @4K、1Hzでの振動レベル50nmを達成しています。通常の用途では無振動といって良いレベルですが、重力波検出器用としてはもう少し振動を押さえる必要があり、冷凍機システムから鏡まで伝熱冷却させてさらに振動を低減させます。このような高熱伝導・低バネ定数材料の研究も行っています。

 また、20Kという極低温まで鏡を冷却するためには鏡における発熱も極限まで減らさなければなりません。これは鏡内部でレーザーパワーがわずかに吸収されることにより生じます。鏡の材料には熱雑音に効果的な(機械的Q値が大きい)人工サファイア結晶を使用します。極低温でのサファイア鏡基材の光吸収率測定を通して、鏡の発熱効果についても研究しています。我々の計測値は90ppm/cmでしたが、現在結晶の改良が進み、小さいサンプルだと20ppm/cm程度の低光吸収率結晶もできはじめています。

 光のショットノイズは光子数の統計的揺らぎに起因するもので、これを低減するため、様々なテクニックを駆使して干渉計内の光パワーを増幅させます。このような光パワーの増幅技術では、鏡の研磨・コーティング精度が重要で、鏡の高精度化に関する研究も行っています。

 この他、光吸収体の研究、結晶接合の研究、高速重力波データ解析システムの開発など幅広い研究を行っています。

 

 以上のようなCLIO-100プロトタイプの開発を通して低温干渉計の基礎技術を完成させ、重力波を本当に検出するためのLCGT計画(基線長3km)をスタートさせるのが当面の目標です。最終的にはLCGTを用いて新しい宇宙の目・重力波天文学へと発展させたいと考えています。

 

 以上の研究は、東大宇宙線研との共同研究で行われています。






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