BESS 実験
BESS実験(Balloon-borne Experiment with a Superconducting Spectrometer) の成功を受けて、 南極周回気球による長時間観測実験、BESS-Polar実験が現在進行中です。 この実験における特徴的な装置として、高強度薄肉超伝導スペクトロメータがあります。 この装置は超薄肉超伝導ソレノイドによって発生した均一磁場中を通過する低エネルギー宇宙線粒子を観測するものです。 BESS実験の目的は、究極的な感度での低エネルギー反陽子の観測であり、これにより宇宙の起源に関する知見や宇宙線粒子の伝播、太陽活動が及ぼす変調等が明らかになります。さらにもう一つの目的としては、宇宙における物質の対称性を探るための反ヘリウム原子核の高感度探査があります。
図1. BESS 超伝導ソレノイド.
BESS測定装置の気球実験は1993年から毎夏、カナダ北部で行われてきました。8回のフライトにおいて、2000個以上の低エネルギー宇宙線反陽子(0.2~4.2GeV)が観測され、それらの電荷、質量やエネルギースペクトルが初めて正確に得られました。その結果、低エネルギー反陽子は主に宇宙線と星間物質の衝突に寄って精製されている事が明らかになりました。しかし、1995年から1997年の測定では、特に0.5 GeV以下の低エネルギー領域においては、理論値に比べて若干の過剰が観測されています。これは宇宙初期のブラックホールの蒸発やニュートリノ暗黒物質の消滅などの興味深い現象からの
低エネルギー反陽子が影響していると考えられています。
BESS-Polar実験では、これら新しい現象の探索のため、低エネルギー反陽子スペクトルを高い統計精度で測定する事が非常に重要となります。
図2. BESS検出器と気球.
本実験はKEK、東京大学、神戸大学、ISAS/JAXA、NASA/GSFC、メリーランド大学との国際共同で行われています。